一般社団法人八王子青年会議所 2026年度理事長所信 第61代理事長 小山 竜太郎

【はじめに】

八王子は戦国時代には北条氏照が統治した滝山城や八王子城を起点とした城下町として、江戸時代には甲州街道の宿場町として人と文化の往来を集め、活気と交流の中で独自の営みが育まれてきました。明治以降は「桑の都」として織物にまつわる産業が隆盛を極め、日本の近代産業を支える商工のまちとして成長を遂げてきました。また、以降、戦後の復興とともに多摩地域の中核都市として発展を遂げ、今日では産業・学術・文化の調和する都市として、豊かな地域資源と人財を有する魅力あるまちとなっています。

私は、この歴史ある八王子に生を受け、今日に至るまで人生の全てを八王子で過ごしています。このまちに住み暮らす方には共感して頂けることかもしれませんが、私は八王子が大好きで仕方ありません。この気持ちはどこから来ているのか振り返ってみると、それはこのまちの性質から来ているのではないかと考えています。八王子には長い歴史がありますが、時代を通じて一貫しているのは、地域に根差した実直で多様な商売が活発に行われてきたという点です。私の家も商いを営んでいた関係から、幼少期より生活圏内に多くの大人の方がいる環境にありました。そこで人と人との信頼を基盤とした営みの尊さを学び、厳しくも温かい言葉のやりとりの中に、このまちならではの気風や文化を感じ取ってきました。

私の思う八王子の価値とはそこにあり、商いを通じて人と人がつながり、地域全体が互いを支え合いながら成長していくという、共助の精神に満ちた土壌こそが、八王子の魅力であると感じています。このまちの価値を自然と感じ取りながら、私はその空気の中で育ち、人との関わりの中で多くを学び、幾度も挑戦と成長の機会を得てきました。八王子というまちは、私にとって人生そのものであり、かけがえのない存在です。

そんな私にとって、八王子青年会議所との出会いは、自らの原点と向き合い、その想いを次代へとつなげていく大きな転機となりました。まちの未来を真剣に考え、行動する仲間たちとの活動のなかで、「人が成長すれば社会が変わる」という信念に触れ、地域との関わり方が大きく変わりました。

今、社会を取り巻く環境は大きく変化し、価値観も多様化しています。しかしどれほど時代が移り変わろうとも、人が人を想い、繋がり、手を取り合いながら未来を描いていくという営みは、決して変わることのない本質だと私は信じています。

そのような不変の本質と向き合いながら、本年、八王子青年会議所は創立60周年を迎えます。60 年という長きにわたり紡がれてきた運動と想いは、時代ごとの課題に真摯に向き合い、地域の明るい豊かな社会を目指した先輩諸兄姉たちの志の結晶にほかなりません。

この節目は、過去をただ振り返るだけの年ではありません。受け継いできた志を改めて見つめ直し、それを次代へと「道」として繋げていく。私は、この記念すべき一年を、八王子の未来に向けた新たな運動の起点とし、未来を見据えた希望の一歩として刻みたいと強く願っています。そしてこの運動の中心には、いつの時代も変わらぬ「人」の成長があり、志ある青年たちが集い、道を創ることのできる力があると信じています。

【活気にあふれる持続可能なまちの創造】

八王子は歴史上、地域に根差した多様な商売が営まれてきたまちです。甲州街道の宿場町として、また織物業をはじめとする産業の拠点として、人・物・情報が行き交い、互いに支え合いながら活気と成長を生み出してきました。このまちには常に商いを基軸とした「人と人との信頼」と「挑戦を許容する風土」がありました。

しかし昨今では、消費行動の変化やデジタル化の加速といった社会構造の変化により、地域経済の在り方は大きな転換期を迎えています。事業者が孤立しやすい時代だからこそ、改めて八王子の持つ「商売のまち」としての本質的な強みを再認識し、未来へと発展的に継承していく必要があります。

商売が生まれるということは、単にお店が増えるという意味ではありません。そこには人が動き、経済の循環が生まれ、まちに「血流」が通い始めるという本質的な変化があります。商売が生まれれば、働く人が必要となり、若者が地域に残り、あるいは新たに移り住んでくる。商売が盛り上がれば、顧客が集まり、人と人との交流が生まれる。そこに自然と賑わいが生まれ、まちは明るく、活気に満ちた空気に包まれていきます。このように商売を中心として、人と経済活動が地域内で循環することで、地域の豊かさが育まれていくのです。

本年は、こうした商売の本質的な力と八王子の歴史的背景を見つめ直し、「八王子は商売のまちである」という誇りある共通認識を広く育む運動を展開してまいります。このような認識を地域に明確に根差すことができれば、「創業する」「事業を承継する」という選択肢が、より自然で前向きなものとして、若者のみならず多くの方の心に芽生えることと考えています。また、既に行政や関係機関が実施している創業支援や事業承継の制度も、より多くの人々に認知され、活用されていくことが期待されます。

この地域が持つ「商売のまち」としての本質的な強みを更に発展させることによって、好循環が生まれ、まちに活気が持続的に生み出され続ける八王子の姿を目指します。

【地域特性を活かした青少年育成】

地域の未来を担うのは、言うまでもなく次代を生きる子どもたちです。そして、その子どもたちが将来、どのように生き、何を選び取るかは、私たち大人がどのような機会と視野を提供できるかが非常に重要だと考えています。

現代の日本社会においては、「働き方」の在り方そのものが大きく変化しています。かつてのように、大企業への就職や安定的な雇用を前提とした進路だけでなく、フリーランス、副業、起業、事業承継など、価値を生み出す方法は実に多様化しています。こうした時代にあっては、子どもたちが「自分で仕事をつくる」という選択肢に触れ、その可能性を早期から認識しておくことの有用性がこれまで以上に高まっています。

しかしながら、学校教育の場においては、創業や家業の継承といった進路が明確に語られることは多くありません。地域社会の中でも、日々の営みの中で「事業を起こす」「地域で働く」といった姿に触れる機会は減少傾向にあります。このままでは、地域の担い手となるはずの若者たちが、商いの価値や面白さを知らないまま育ち、将来の希望ある選択肢として選ぶことは限定的となってしまいます。

私は、こうした状況を変えていく必要があると考えています。地域の子どもたちが将来を考える中で、「自分が起業する」「家業を継ぐ」という選択肢を自然に思い描けるような教育的環境をつくること。それこそが、「挑戦する人材が育ち、地域に価値が溢れる」まちを実現する第一歩であると確信しています。

八王子青年会議所ではこれまで、「小学生高学年を対象に企画から販売まで実際に商売体験を行ってもらう八王子こども屋台選手権」「中学生を対象に働く意義や目的を考えてもらうジョブトーク」「将来の進路が決まっていない中学生を対象に自分のキャリアを考えるきっかけを与えるキラキラまちしごと」など、働くことに関連した青少年育成事業を継続して行ってきました。本年度はこれら事業に「八王子は商売のまち」という要素を取り入れ、地域の子どもたちに将来自分で事業を行うという選択肢を持つことができるようになる運動を展開してまいります。これらの運動を通じて、未来の八王子をより魅力的に発展させることのできる人財の開発を行っていきたいと考えています。

また、八王子青年会議所が運営支援を行っている八王子森林パトロール隊も、地域の将来を担う人財育成事業です。そして八王子森林パトロール隊は2027年度に結隊60周年を迎えます。高尾山の清掃活動や様々な啓蒙活動を基軸として、子どもたちに自然に親しみ、体を鍛え、奉仕の精神を養うことを行動指針としているこの取り組みは、今後も八王子の子どもたちの為に存在していくことに大きな価値を持つと考えています。
本年は八王子青年会議所からの支援として、60 周年を隊の発展の機会とすべく、様々な準備を行う一年とします。持続可能な運営方法の模索や隊の発展に寄与するきっかけづくりなど、八王子森林パトロール隊が今後も地域の子どもたちに対し、継続して八王子独自の学びを提供することのできる組織となることを主眼に置いた取り組みを行ってまいります。

【地域の明るい未来を生み出すことのできる人財開発】

青年会議所のミッションは、「青年が社会により良い変化をもたらすために、リーダーシップの開発と成長の機会を提供する」ことであると定められています。これは、青年会議所という組織の存在意義そのものであり、私たちが運動を展開する上での原点です。

しかし、この「青年」とは私たち会員のみを指すものではありません。地域に住み暮らす、若しくは商いなどで地域に関係を持つ全ての青年たちが、より良い社会の担い手となり得る存在であり、私たちはその可能性に真剣に向き合っていかなければなりません。だからこそ、私たちはこの組織の価値と意義をしっかりと伝え、共に成長を目指す新たな仲間を一人でも多く迎え入れていく必要があります。

会員拡大とは、単なる人数の増加を目指すものではありません。地域を想い、行動する志ある青年を一人でも多く増やし、その一人ひとりがこの組織を通じて自己成長を遂げ、やがては地域にとって欠かせない存在となる。それこそが、私たちが目指す人財開発の姿です。そして、入会したメンバーには、この青年会議所という「成長の舞台」において多くの挑戦と学びの機会が与えられます。時に葛藤し、悩みながらも、仲間と共に経験を積むことで、真に地域や自身の会社をより良く導くことのできるリーダーへと育っていくのです。

本年度、八王子青年会議所は会員拡大に真正面から挑戦します。そして同時に、一人ひとりのメンバーが地域の未来を託されるにふさわしい人財へと育つよう、成長の機会を適切に、全力で創出してまいります。青年の数だけ未来があり、成長の数だけ地域は変わる。その想いを胸に、青年会議所の本質的価値を地域に広げてまいります。

【リレーションシップで価値を生み出す】

青年会議所の運動は、単に自分たちの中だけで完結するものではありません。私たちが描く理想の社会を実現していくためには、「関係性」を育み、「共感」を生み、「連携」によって広げていく力が不可欠です。八王子青年会議所は、その基盤として広報と渉外の両輪を磨き続ける必要があります。

まず、広報は私たちの運動を社会とつなぐ入口です。どれだけ意義ある運動を行っていても、その価値が伝わらなければ、存在しないのと同じです。地域社会とつながるために、広報は単なる情報発信ではなく、「共感を生み出す対話」の手段であるべきだと考えています。情報の受け手側が心を動かすような発信こそが、共感を生み、行動を促す力となるのです。

そのためには、私たち自身が楽しみ、誇りを持って活動し、その熱をそのままの温度で伝えていくことが重要です。八王子の未来を想い、行動し続ける私たち青年の姿が、言葉以上の説得力をもって地域に届く。そのような広報を目指してまいります。

また、渉外業務は、私たちの視野を広げ、運動や活動の質を高める大きな可能性を秘めています。
姉妹JCとの交流は、異なる地域文化や価値観に触れることで、自らのまちを見つめ直すきっかけとなります。国際姉妹JCとの関係は、異なる地域文化や価値観に触れることでグローバルな視点から地域を考える機会を生みだします。特に今年は、台湾・髙都国際青年商会と国際姉妹JC締結を行ってから5年が経過します。八王子青年会議所は創立60周年、髙都国際青年商会は創立30周年とお互い記念すべき一年となりますので、特別な交流が図れる絶好の機会です。お互いの交流を通じ、それぞれの地域を更に発展させる一助となる機会を創出します。そして日本青年会議所や東京ブロック協議会、八王子青年会議所以外の青年会議所などと
も連携を図ることにより、スケールメリットを生み出した上で、新たな知見や刺激も積極的にメンバーへ機会提供してまいります。

このような多様なリレーションシップの蓄積が、私たちの運動の広がりと発展に寄与し、最
終的には八王子という地域に新たな変化と成長をもたらす礎になると確信しています。

【60周年の歴史に感謝と未来への創道を】

2026 年度、八王子青年会議所は創立60周年という大きな節目を迎えます。人にたとえれば「還暦」にあたるこの年は、これまでの歩みに感謝を捧げるとともに、新たな原点に立ち返り、未来への一歩を踏み出す再出発の年でもあります。

これまで60年にわたり紡がれてきた運動の軌跡には、まちの課題に真摯に向き合い、変革の先頭に立ってきた先輩諸兄姉の志が脈々と息づいています。その偉大な歩みは、私たちが進むべき「道」の礎であり、深い感謝と敬意をもって継承すべきものです。

しかしながら、この節目の年は、過去を称えるだけの年ではありません。この記念すべき年を絶好の機会と捉え、地域の未来を創造していくための新たな起点としていきたいと考えています。

本年度に予定されている記念事業や式典は、まさにそのための象徴的な取り組みとなります。八王子青年会議所の今日に至るまで紡がれてきた志をしっかりと受け取り、希望あふれる八王子のために、新たな道を創造することに挑戦することをお誓い申し上げます。

【結びに】

八王子青年会議所が歩んできた60年の歴史は、地域の未来を想い、挑戦し続けた多くの先輩諸兄姉の情熱と行動の結晶です。その歩みがあったからこそ、今の私たちがこの地で「まちを想い、動く」ことができています。心からの敬意と感謝を、ここに申し上げます。

私は、この青年会議所と深い縁を持って育ってきました。八王子青年会議所第32代理事長であった父の存在は、私にとって常に誇りであり、憧れのリーダー像でした。社会を理解し始めた頃には、すでに父の背中を間近で見ることは叶いませんでしたが、青年会議所に入会したことで状況は変わりました。先輩方の語る父の姿、組織に息づく伝統や理念、その至る所に、私は父の背中を見たのです。

私にとって青年会議所とは、ただの学び舎ではなく、「憧れが現実となる場所」です。そして今度は、自分が誰かにとっての「背中」になる番です。青年会議所には、人を育て、地域を変える力があります。だからこそ私は、この組織の持つ高い価値を次代に継承し、さらなる高みに昇華させていくことを、必ずや実現したいと考えています。

2026 年度、八王子青年会議所は創立60周年という節目を迎えます。
この一年は、単なる記念の年ではありません。人・伝統・理念がつながる今だからこそ実現できる運動を、皆と共に力強く創り上げ、次の時代へとつなぐ絶好の機会です。

私たちの手で、地域が未来に希望を抱くことのできる気運を醸成し、青年会議所の存在価値を社会に明確に示す一年として刻んでまいります。

私は青年会議所に、父の背中を見た。
今度は私が、その背中を見せる番です。

この60年が紡いだ信頼と志を継承し、これからの八王子と、これからの青年たちのために、その歩みを、決して止めることなく、道を創り、力強く進めてまいります。

承志創道。

一年間どうぞよろしくお願い致します。