一般社団法人八王子青年会議所 2023年度理事長所信 第58代理事長 佐藤 武司
[目次]
【はじめに】
八王子青年会議所は、私に多くの学びを与えてくれました。 社会貢献という大義のもとに展開された機会は、様々な経験と数多くの出会いをもたらし、私自 身に大きな影響を与えてくれました。 そして、いま 、理事長としての挑戦を目の当たりにし、改めて私は「リーダー」について問いか けられていると感じています。 私は元来、前に出て何かを進めていくような人格ではありませんでした。そんな私がこのような 機会をいただけることは、まぎれもなく青年会議所の特徴である「機会の提供」です。そして、青年 会議所に所属するすべての人にそれぞれの機会が提供されています。 青年会議所の運動は、その過程において厳しさや、苦しさを伴うことが度々あります。しかしな がら、その事業を終えたときの達成感は何物にも代えられないものです。特に八王子青年会議所 の仲間と共に構築した事業の実施体験は私自身に大きな達成感と喜びを感じさせてくれました。 そして、そのような体験をした活動の根幹にはいつも、道を切り拓いてくれた先輩や仲間の姿があ り、無我夢中でその背中を追ってきた私がいま、メンバーを牽引する役割をいただきました。 私は、八王子青年会議所のリーダーとして、追い続けた背中を体現し、先輩諸兄姉が紡ぎ出し た八王子青年会議所の歴史を大切に、ここに集ったメンバー一人ひとりが持つ想いに耳を傾け、 メンバーに成長する機会をもたらし、夢をもって未来の八王子青年会議所を紡ぎ出します。
【八王子のまちの未来を紡ぐために】
八王子は縄文時代の古墳が発掘されるなど、有史以前からこの地域に人々は生活を営み、江 戸時代へと移り変わる頃には東西南北へとまちを貫く大きな街道が整備され、産業では生糸や織 物のまちとして隆盛を極め花開いた文化があり、現在の八王子にその歴史を色濃く残しています。 そして現在は、学園都市として21大学と約10万人の学生が住み暮らし、首都東京のベッドタウン として今日まで成長を遂げてまいりました。 しかし、まちのハード面の発展だけでは成長には限界があります。少子高齢化により人口は減 少し、物質的消費には上限があります。そのような八王子が、更に活気溢れるまちとして発展をし ていくためには、ただ単に人口を増やすだけではなく、体験することで満足を得る「コト消費」を創 出し、住み暮らす人々だけではなく、国内、海外から訪れるたくさんの人々に目を向けた施策が必 要です。現在、八王子市は東京たま未来メッセの完成により、多摩地域の MICE 拠点となるべく官 民が一体となってその活動に力を注いでおります。私達青年会議所は、全国、全世界に組織をも つ世界最大の青年組織であります。私たちは、この組織のネットワークを最大限活用し、MICE 誘 致を実現するための歩みを進めていくとともに、「コト消費」に着目した新たな潮流を生み出してま いります。 また、八王子は学園都市として約10万人の学生が住み暮らしていますが、その市内就職率は たったの1%です。現在、日本全国でも働き手の不足が叫ばれるなか、進学をきっかけに学生が 八王子に集まることは大きなチャンスであることは周知のことであり、様々な機関、団体が就職の 斡旋を行っております。本年は我々もこのことに着目し、産官学連携を更にアップデートし、市内 就職率の向上に寄与してまいります。
【姉妹 JC との交流】
八王子青年会議所は今日まで、姉妹JCと親交を持ち続け、友情を育んでまいりました。日光青 年会議所、苫小牧青年会議所とは、かつて八王子の千人同心が日光東照宮の警備を担い、苫小 牧の開拓に携わった縁から、行政間での姉妹都市締結が結ばれ、それに倣い JC 間での姉妹締 結が結ばれました。 また、2006 年に八王子市と台湾・高雄市との間で海外友好都市協定が締結されたことを受け、 2021 年には台湾・高都國際青年商會が姉妹 JC となり、以来、今日までそれぞれの姉妹 JC と交 流を図り、強固な関係を築いてまいりました。 昨今の新型コロナウイルス感染症の流行の中においては、継続していた交流の機会が奪わ れ、何もできない状況の時もありましたが、お互いのまちで同じ事業「カーブミラー清掃」を行うな ど、出来得る限りの交流を築いてまいりました。日本がマスク不足の際には、台湾から 1 万 1 千 枚ものマスクの寄付を頂戴し、その友情に感謝をすることはもちろん、改めてこうした友好関係の 大切さを感じることとなりました。 本年は、こうした友情に恩返しをする機会も含めて、停滞していた交流を再始動し、メンバー一 人一人が主体的に相手を慮り、行動を起こすきっかけとなる交流事業を行っていくとともに、会員 相互間だけではなく、幅広く市民に交流の機会を提供することで、まちとまちの友情を紡ぐ架け橋 となります。
【八王子の未来を織りなすための人財の創出】
第四次産業革命へと移り変わった技術革新の情報化社会は、若い世代になればなるほどデジ タルネイティブ世代として、当たり前のようにデジタル技術を受け入れ活用しており、全国の青年 会議所もZ世代(1990年~2010年までに生まれた世代)が入会する時代となり、世代間格差が 顕著化されつつあります。さらに、私たちの子供はα世代(2010年以降に生まれた世代)として これからを歩み、時代の変化が急激かつゲームチェンジが起こりやすい環境の中を生きなければ なりません。そして、八王子では、東京都による未来の東京戦略として2030年に向け、南大沢に ある東京都立大学のキャンパスにおいてローカル5Gの運用が行われ、またギガスクール構想と して全国の小学生1人に1台のパソコンが提供されるなど時代に合わせたデジタル政策が展開さ れています。 そんなデジタル社会の今、今後の未来を生き抜いていく上で求められる能力とはなにか。我々 青年経済人は常に時代の潮目を敏感に感じ、目まぐるしく変化する社会に順応していく、そんな 人財でなければなりません。そのためにまずは、我々自身の盤石な社業体制の構築が何よりも 重要であり、これまで行ってきたSDGsを基本に、社業の発展のためにESG(Environment (環 境)・Social(社会)・Governance(企業統治))の要素を考慮した経営をしていかなければなりま せん。そして、このESGの考え方を青年会議所にいながら体現していくことでビジネスと JC、双方 の相乗効果を図り、青年経済人としての質的価値向上に繋げていきます。 また、私たち青年経済人が未来を見据え、まだ見ぬ世界に対応するために様々な知見を広げ ることで、様々な困難にも柔軟に対応できる人財となり、自身が持つ社業にも JC での学びを大い に活かし、成功の原体験を後世の人々へ伝播させていくことで未来を生き抜いていける人財を自 走的に輩出していく好循環な組織構築をして参ります。
【八王子森林パトロール隊の運営支援】
八王子青年会議所が55年間運営・支援する八王子森林パトロール隊は、現在では市内各地 から70名を超える小中学生が集まり活動を行なっています。八王子市の象徴であり日本遺産に も認定されている高尾山を本拠地とし、自然環境に親しみ、心身を鍛えることを目的とした八王子 森林パトロール隊での日々は、学校では得ることのできない経験と、ともに汗をかくことで繋がる かけがえのない仲間との出会いがそこにはあります。 また、森林パトロール隊の活動は、子供たちはもちろんのこと、支える我々「おとな」にとっても 様々な学びがあります。自然の中で行う活動は、常に危険を予測し、子供たちの安全を確保する 必要があり、様々な知識と経験が求められます。さらに、山での活動は、子供たちの好奇心を掻 き立て、たくさんのことを吸収していくその姿は、私たちにとっても多くの成長を与えてくれます。 そんな八王子森林パトロール隊をこれからも維持、発展させていくためにも、我々自身の指導 力開発はもちろんのこと、時代に合わせた組織改革を行い、この活動をもっと多くの「おとな」へ発 信し、たくさんの「おとな」が関わることで発展する、八王子市民の森林パトロール隊を目指して、 今後も我々八王子青年会議所の主力事業として展開してまいります。
【八王子青年会議所のブランドとその発信】
八王子青年会議所は、今も昔も、まちの発展を切に願い、地域の課題に焦点を当てた運動を 行なうことで、まちの発展と人材育成の両面にて社会貢献を果たしてまいりました。 これまで行われてきた運動の中には、大きな成果を上げ、今も地域に根付く活動や、また市内 諸団体、政界財界において活躍される人材には JC 出身の方が多く、こうした実績が私たち八王 子青年会議所の価値を担保すると共に、私たちが誇るべき八王子青年会議所のレガシーであり ます。私たちがこれからも、その価値を高めていくためには、地域で活躍できる人材を創出してい くと共に、まちにインパクトを与えられる運動を行ない、多くの市民の共感を得ることが必須であ り、そのためには効果的な情報発信が必要不可欠であります。現代社会において、SNS の使用 は常態化し、一個人が発信した情報が社会に大きな影響を与えることができる時代の中で、私た ちは、八王子青年会議所のレガシーをブランディングし、あらゆるコミュニケーションツールを駆使 し、多角的な広報を行ってまいります。 私たちはこの数年、高尾地区や南大沢地区の方々と共に事業の機会を多く持ち、深く関係を構 築してきました。新たに様々な施設ができあがった八王子駅周辺で、人々が巡ることで八王子の 伝統文化と新しいまちの融合と新たな魅力を見出す機会を創出します。また、パートナーシップを 組む団体が八王子青年会議所と一つの運動を共に創りあげられることにより、共に発展していく 未来を描きます。
【仲間づくりと青年会議所と基礎の構築】
近年、全国の青年会議所に所属する会員数は減少傾向にあります。私たち八王子青年会議所 のメンバー数も同様に減少傾向にありますが、その根源には会員の対象となる人々の価値観の 変化が大きな問題ではないでしょうか。戦後、日本経済を復興させるべく立ち上がった青年たちよ り発足した青年会議所、明るい豊かな未来を築き上げようと私たちの先輩諸兄姉たちは国のた め、地域のため、今を生きる私たちの未来のためにご尽力されてきました。 私たちは、先輩諸兄姉から57年間続く八王子青年会議所が行う運動が八王子のまちをより良 くすると自負しており、この想いに対し、市民の皆様に共感を得ることが大きな力になると信じてい ます。 この想いを市民の皆様に力強く発信していくためには、より多くの仲間の存在が必要です。ま た、近年の平均在籍年数は約4年間と在籍年数が短くなっている現状もあり、新しいメンバーには 効率的な成長の機会を持つ必要があります。 そこで、八王子青年会議所について学ぶとともに青年会議所本会の研修プログラムを活用し、 JC だからこそできる体験を得ることで、私たちが今後取り組む運動に積極果敢に挑戦するメンバ ーを育成します。また、積極的に取り組んだメンバーの姿は、日頃から運動に対し真剣に、そして 楽しそうに取り組む。自身が行うこの活動に自信をもって周囲の方に想いを伝えることができるよ うになります。 メンバー一人ひとりの行動がやがて市民の皆様が共感され、私たちの想いが伝播し市民の中 から興味をもってくださる方が現れることで、新たな仲間が増えていく仕組みとなります。
【組織の中核を担う重要な役割】
青年会議所がこれまで培ってきたものの中で、最も価値あるものが議案と会議の仕組みであ り、この仕組みが正常に機能するためには総務の存在が必要不可欠であります。 また、この仕組みは、使い方を間違えると時には効果的な事業実施を阻害し、会員の士気の低 下だけではなく、青年会議所の信頼を大きく損なうことにも繋がりかねないものであり、その求めら れる役割は重大なものであります。 総務は、青年会議所運営の大黒柱であるがため、先輩諸兄姉から受け継いだこの仕組みを単 に維持継続するだけではなく、時代の流れに即して、あらゆる変化に対応しうる機動力が求めら れ、また、この仕組みが機動的且つ効率よく機能するためには、それを支える徹底したコンプライ アンスの遵守、財政の管理が必要なことは言うまでもなく、こうした会議のシステムが、我々青年 会議所の人材育成機関としての所以の一つであり、重要な基礎であります。 また、私たちにとって他の団体との関係も重要です。特に2019年に災害協定を結ばせて頂い た八王子市社会福祉協議会との連携も今まで以上に関係を深めていくことでより強固なパートナ ーとして、本年も引き続き災害時の協力体制を整えてまいります。
【全国大会へのコミットメント】
日本 JC が誇る大規模な3大大会の一つに全国大会があります。全国大会は次年度への継承 の場として位置づけられ、今年は32年ぶりに東京の地で開催されることもあり、全国の JC メンバ ーが東京に一堂に会する様子は JC の規模を感じさせてくれるものです。 八王子青年会議所は副主幹 LOM として、開催地である東京青年会議所を力強く支援することは もちろんのこと、東京ブロック協議会とも連携をとり、テーマである「多様性溢れる文化都市東京」 の魅力の一翼を担い、大会の成功に寄与してまいります。 また、この大会は今後の MICE 誘致へ向けた大きな学びとなるはずです。我々はこの機会を充 分に活用し、八王子の魅力を発信することはもちろんのこと、今後の八王子を見据え、メンバー全 員で全国大会東京大会へコミットしてまいります。
【最後に】
私たち青年会議所のメンバーは、日々会議を行ない、真剣に意見を出し合いながら一つの事 業を創り出してきました。その作業は、細い一つ一つの繊維から糸を紡ぎ出す様子さながら、互い の想い一つ一つを紡いで一つの事業を完成させてきました。 私は、この青年会議所の事業を創り出す過程のように、この世界の人々が自身の経験により 裏打ちされた知見による個性を持ち、各視点から意見を出し合い一つのことを決めていく「個性が 調和する社会」を実現することが明るい豊かな社会であると考えています。 八王子青年会議所は、まさに八王子に関わる我々青年経済人に想いを紡ぎあう場としてありつ づけています。1966年10月1日に全国330番目のLOMとして産声をあげてから57年目。先輩 諸兄姉により紡ぎあげられた歴史の恩恵を受けながら、私は、八王子青年会議所に集ったメンバ ーとともに若者らしく、私達が愛するまち八王子の未来への歴史を紡ぐ原動力となるべく、一年間 運動に邁進してまいります。