一般社団法人八王子青年会議所 2025年度理事長所信 第60代理事長 白栁広賢

【はじめに】

八王子には57万人を超える市民が暮らしており、都会のにぎわいと自然のここちよさがバランスよく調和され、働き方、学び方、遊び方を選べるなんでもそろった環境と、やわらかな風土がある、多様性に富んだまちです。八王子市の市政世論調査によれば、八王子に生まれ育った人の多くは八王子に定住する傾向が強いという結果が出ており、市民の多くがまちの魅力をおすすめしたい意欲や地元愛をもって生活しています。
また、多くの著名人を輩出している側面もあるなかで、著名となってなお八王子に対する地元愛を形成する活動などを行っている姿をよく見かけるのも、このまちの魅力を裏付ける根拠の一つとして私は考えます。
そして、八王子市の特色の一つでもある学園都市としての側面は、言い換えれば人材の宝庫であり、東京都の都市戦略のひとつであるスタートアップやユニコーン企業の創出といった今後の経済に好循環を生み出すことにつながるイノベーションが創出されることが期待されています。その根拠のひとつとして、東京都の産業振興を目的とした交流拠点としてMICEなども期待されている東京たま未来メッセが建設された背景があります。
私は八王子が大好きです。八王子が称えられると自分のことのようにうれしく感じ、悪く言われると怒りを覚えます。私にとって八王子は地元であり、故郷であり、家であり、家族です。幼いころ、母から「父は八王子が大好きだ」と度々聞いていましたが、実は当時の私にはその意味を理解することができませんでした。高校生になったある日、友人と会話で各々の地元の話題に発展しました。その時、知らぬ間に八王子の自慢をしている自分がいました。幼い頃に理解できなかった父の感情を自身が抱くようになっていたことにも気付き、より八王子を意識して過ごすようになりました。自身が成長していくなかで、当時の私は自分を大きく見せるために、八王子を自慢していたことに気付きました。同時に、全ての人が同じ感情を抱くわけではないこと、すべての地元が自分を大きく見せる材料になるわけではないことを認識しました。この他人との違いに対する気付きは私に八王子への深い感謝をもたらし、八王子へ恩返しがしたいという思いを強めました。自慢ではなく、八王子への地元愛が私にとってのアイデンティティであり、生き方となりました。
地元愛が強い人が住み暮らす八王子の良さと強さを実感する中で、私は八王子を冠するすべてが「一番」であるべきだと感じ、八王子にこだわって生きることを志しています。それは青年会議所も例外ではなく、私は八王子を冠する八王子青年会議所が全国で一番の青年会議所であると確信しています。この信念を持ち、多くの若者たちにも眠る八王子愛を育んでいくことで、青年会議所の成長が八王子の発展に繋がると信じています。
そして、八王子の強さを理事長を通じてさらに高めていくことは、私にとって大きな使命です。自分の地元を一番と思う人、あるいは一番でないなら自分が一番にすると思う人が日本で一番多い地域、それが八王子だと信じています。この思いに基づき、過去の歴史に敬意を払い、温故知新の精神で学び、八王子の魅力を証明したうえで八王子のより良い未来につなげていくために尽力することを誓います。

【地元愛に溢れる八王子】

八王子青年会議所のメンバーは、まず一人ひとりが「自身の考える八王子の魅力」を自らの言葉で語れなくてはなりません。これは、メンバー一人ひとりが八王子に対する理解と情熱を持つことが前提であり、自分自身の視点から八王子を語れることで地域に根差した魅力を発信でき、共感を生むことにつながります。
我々、八王子青年会議所メンバー一人ひとりが八王子の魅力を積極的に発信していくべきです。そしてその過程で地元がもつ可能性を見つめ直し、模索したうえでその先の未来を描き、具体的な運動に落とし込むことが重要です。このことで得られる様々な共感は、同じ志をもつ新たな仲間や、価値観を共有するパートナーとの貴重な出会いをもたらします。それが結果として、八王子をよりよくするための運動を発展させる原動力となります。
これにより、八王子と八王子青年会議所を含む多様なパートナーが織りなす好循環が発生します。この好循環こそが、八王子がこれからも発展し続け、未来をより良いものへと導くための仕組みのひとつになると私は確信しています。

【多種多様な人材】

八王子は多様性に富んだ環境と風土から、様々な場で活躍する優秀な人材を輩出してきました。しかし、新型コロナウィルスの影響を皮切りに、目まぐるしく変化する現代の社会情勢においては、従来と同じ環境で同じ成果が得られるとは限りません。新型コロナウィルスが第5類感染症へ移行したことから、2024年にはインバウンド需要が全国的に高まり、八王子においても高尾山を中心に観光の活気が戻り、多くの訪日外国人が訪れる現状が見られます。一方で企業においてはIT化が加速し、変化に適応できる柔軟な人材がより多く求められる時代へと突入しています。
我々八王子青年会議所は、青年経済人として社会の変化をいち早く察知し、それに応じた運動を展開することで、変化に適応するだけでなく、社会そのものに変化をもたらすことを目指さなくてはなりません。そのために、今求められる人材像を見据えた教育と育成に寄与することが求められています。
そのためには、これまで継続してきたジョブトーク事業をはじめ、現代に求められる考え方の普及や、高尾山をはじめとする観光資源の新たな価値の発見と展開、さらには市内で働く大人の仕事が地域経済にどのように影響を与えているかを、未来を担うこどもたちに伝えていかなくてはなりません。
地域の自然環境を守る森林パトロール隊の取り組みでは、高尾山やその周辺の自然を守る活動を通じて、地域の観光価値を高めるだけでなく、持続可能な未来を築くうえで重要な役割を果たしています。長年培ってきたこの運動は、子どもたちが自然と共生する意識を持ち、地域や社会へ貢献する心を育む機会を提供し続けてきました。子どもたちの課外活動に様々な選択肢がある時代ですが、森林パトロール隊の魅力を発揮していき、青年隊員の拡大にもつなげていくことで、更なる発展と成長ができるようにメンバーが一丸となって支援してまいります。
一連の運動を通じて、未来にわたり八王子内外で活躍する優秀な人材が八王子から輩出されることを目指し、八王子のより良い未来につなげます。

【総務・渉外・広報】

八王子青年会議所が採用する組織運営の方法は、その実践を通じて社業や人生に還元できる貴重なノウハウを身に付ける機会を提供します。一見すると非効率的で意味のないように思える場面もあるかもしれませんが、地域や様々な業界で活躍する先輩諸兄姉の背中をみせていただき、八王子青年会議所で学んだことが必ず今の成功に役立っていることは、我々が運動を行っていくうえでの見通しになっています。それは現役時代に仲間たちとより良い方法を模索し、必要に応じて柔軟に変化させてきた証明でもあります。
私自身も、八王子青年会議所で組織運営を学ぶ中で、会議運営や事業計画の立案など、現時点ですでに役に立っていることが多くあります。そこに至るまでに、まずは素直な姿勢で運動に取り組みその中で自然と培われたものだと感じております。
今年度の総務では、ルールの徹底から培われる会員の経験から一人ひとりの能力開発を実現し、守破離をもって制度の改変や組織の改革を実行することで、すべての会員が八王子青年会議所内外でその能力を発揮できる状態を目指します。
渉外業務においては、八王子青年会議所の運動を友好JCや姉妹JC、地域や外部パートナーに理解してもらい、共感を得るためのコミュニケーションが不可欠です。そのために、渉外活動を通じて連携を強化し、活動の幅を広げます。
また、広く共感を得るための広報においては自分たちの情報を発信するだけでなく、八王子市民の関心が高い情報の定期的な発信をおこないます。我々の発信する情報を市民の皆様に楽しんでいただくことを通じて、そこに織り交ぜて発信する八王子青年会議所の情報をもって八王子青年会議所を認識してもらうことに努めてまいります

【60 周年を迎えるにあたり】

八王子青年会議所は、これまで多くの運動を展開してきた輝かしい歴史と、優秀なリーダーを輩出し続けてきた実績があります。そして、現代においても、時代とともに変化する社会情勢に適応し、必要に応じて仕組みを変革しながらその使命を果たし続けていると私は考えます。
2026年に迎える創立60周年では、これまで歴史を紡いで下さった先輩諸兄姉に感謝を示す絶好の機会です。我々現役メンバーが、八王子青年会議所の更なる発展と成長を具現化し、先輩諸兄姉が誇りに思える姿をお示しすることで感謝の意を表したいと考えております。また、これまでに様々な形でご協力を賜ってきた関係各位に対しても、これからの八王子青年会議所へさらなる期待をもっていただけるような運動を通じて、感謝を形にしていく必要があります。
そのためには、組織を拡大し、会員を増強したうえで、組織の価値を高めることが重要です。八王子青年会議所に所属するメンバーが一丸となってひとつの事業に臨むことを通じて、組織の基盤が強化され、さらにメンバー一人ひとりが八王子青年会議所に魅力を感じ、誇りを持てるような環境を整えることで、組織基盤の更なる強化を図ります。
2026年に60周年を迎えるにあたり、この節目をゴールとせず、未来への起点であると捉え、過去への感謝と未来への展望を兼ね備えた特別な機会とし、そのための準備を通じて八王子青年会議所がこれからも地域を牽引する存在であり続けることを目指します。

【組織の価値向上を通じた八王子の未来】

私は八王子青年会議所に所属する仲間が増えることが、八王子の未来に影響を与えると考えております。八王子青年会議所をご卒業された先輩諸兄姉の多くは、市内の様々な団体やまちづくりに関わる場で、今もなおご活躍されております。これは、八王子青年会議所で得た経験や知見が関係している何よりの証拠です。
八王子青年会議所はリーダーを育成する機関としての側面をもち、未来の八王子をよりよい方向へ導くことのできる人材を輩出することが可能な団体であると私は考えます。ならば八王子青年会議所の使命は、一人でも多くのリーダーを輩出し、これを継続しつづけることであると私は断言します。
そして、これを実現するためにはまず会員数を増やすことが最も重要であると考えます。より多くの人材が所属することで、多様な環境や考え方が互いに化学反応をおこし合い、より質の高い運動展開を可能とし、それと同時に所属する会員の経験や知見の質を高め、八王子の未来を担うリーダーの輩出に作用するからです。
ただし、だからといって会員数をただやみくもに増やすだけではこの成果には至りません。八王子青年会議所には先輩諸兄姉が活動の基本としてきた重んじてきた「奉仕」「修練」「友情」の三信条があります。己ではなく誰かのために力を尽くし、諦めることなく最後まで取り組み、苦楽を分かち合い支え合うことで生れる強い絆が成功へと至る。これをもって明るい豊かな社会の実現に全力で挑戦することではじめて成果が得られます。そのためにはなぜ八王子青年会議所の会員として活動や運動をしなくてはならないのか、その使命や意義について学ぶことが不可欠であり、質の高い運動展開から得られる経験や知見と併せた二つの要素をもって、会員が成長と発展を得る機会とします。
これらを実現することで、所属する会員一人ひとりが自覚と誇りをもって義務を果たし、今後も八王子市に所属するリーダー育成機関の一つとして、リーダーを輩出し続け、八王子の未来に貢献する八王子青年会議所へ発展させることを誓います。

【さいごに】

八王子というこのまちは、私にとって「基盤」であり、「土台」であり、「拠り所」と言える存在です。このまちが私に多くの機会を与え、成長の場を提供してくれました。八王子という豊かな基盤があったからこそ、私たちの所属する会社も私自身も育まれてきたのだと実感しています。言い換えるならば、このまちは私を支え、未来へ押し上げてくれた「舞台」そのものです。八王子があったからこそ、学び、挑戦し、誇りを抱ける自分がここにいるのだと感じます。そして、今こうして八王子青年会議所に身を置き、このまちに恩返しをする機会をいただけたことを、私は心から貴重なものだと思っています。
私にできる恩返しとは、この大切な「舞台」である八王子に尽力し、その発展に貢献することです。それは私を支えてくれた基盤に対して果たすべき義務であり、何よりも私の誇りです。このまちに「育ててもらった」「学ばせてもらった」「誇りを持たせてもらった」ことを胸に刻み、八王子青年会議所の活動や運動を通じて、メンバーは自覚と自信に満ち溢れ、まちの信頼をあつめ、送り出してくれた会社や家族によかったと思ってもらえる、関わる人すべてが喜んでくれる、そんな一年を必ずやつくりあげてまいります。